背伸びKISS
「あ…つや、やっぱ戻ろうよぉ…」
真っ暗闇にヒュードロドロというBGMが不気味に流れている。
わざとなのか自然なのか外よりもひんやりしていて、手に持たされたローソクだけがやけに煌々と光りを放っている。
「まだ入ったばっか
だろ」
「うぅ…」
篤弥の顔が
ものすごく生き生きしている気がするのは
気のせい……?
ぎゅっと握った篤弥の服に皺ができるほど強く
掴んだまま足を前へ進めた。
「ひっ…」
小さな悲鳴をあげながら、ゆっくり確実に暗闇の中を進む。
「……お前怖がりすぎ」
最初は篤弥の上着の裾を掴んでいただけだったんだけど、今ではすっかり篤弥の腕にしっかりと掴まっている。
そんなあたしを、ちらりと目だけを動かして捕らえた篤弥。
「だ、だって怖いんだもん」
「…プッ、吃ってるし」
肩を揺らして笑っている篤弥を横目に、あたしは篤弥の腕に絡めている腕をぎゅっ強め、「うるさい」と顔を背けた。
こんなの怖くない方がおかしいでしょ!?
あ―、ムリムリ。