ルリイロ。
『………瑠璃』
俺が名前を呼ぶと、瑠璃はビクッとからだを震わせた。
『……あっ、あ…ごめ…なさ…。わたしっ!わたし…わす…忘れ物…取りに…きただけだから…。』
ようやくコトバを発した瑠璃は、真っ赤な顔をして、自分の席へ走り、いつも持って帰らない、学校用だと言っていた辞書をカバンへつっこみ、すぐに教室を走り去った。
階段を降りているだろう、パタパタという足音だけが響いた。
明日美は、瑠璃の背中を見ながら、不思議そうに言った。
『どしたの…?あの子。ねえ、ケンちゃん。』
『へっ!?あっ…ああ…』
ケンはいきなり話をふられて焦っていた。
その反応を見た明日美は、俺とケンをジロリとにらんだ。
『……あんたら、まさかなんか言ったの?』
ケンは、明日美を手招きして、椅子にすわらせて、今の状況を説明した。