ルリイロ。
俺は我に返ると、上着をひっつかみ、階段をかけ降り、外に飛び出た。
瑠璃は、俺の顔をみると、少し驚いていた。
『…早いね、悠ちやん…』
そう言って、ふふっと笑った。
『あ、ああ…。そんなことよりお前、どうしたんだよ?こんな時間に…。』
『ごめんね、勉強中に。明日…試験でしょ?だから…これ。』
瑠璃は、俺の目の前に、なにかを持った手をぐいっとつきだす。
俺は無意識に手をひろげ、瑠璃のこぶしの下に差し出す。
瑠璃はそっと俺の手のひらになにかを置いた。
その時かすかにふれた瑠璃の冷たい指先に、すこしドキドキした。
俺は、手のひらにおかれた何かを覗きこむ。
『…お守り?』
それは、赤い布地に、白い糸の刺繍。『合格祈願』と縫われた、
お守りだった。