Melty Kiss 恋に溺れて

「そう、それは良かった。
きっと、パパが居ないから淋しがっていたんだろうね。
お待たせ、ハニー。
帰ってきたよ」

と。
まるで小さい子供をそうするかのように、彼はぎゅっと私を抱きしめた。

ブルガリの香水が、仄かに鼻をくすぐっていく。

「お帰り、パパ。
私はもう子供じゃないんだからっ」

そう言ってみるのだけれど。

「何を言う。
わが子はいつまでたっても、可愛い子供なんだぞー」

と。
彼は、まるで四六時中子供を愛している親のようなことを臆面もなしに切り出してくるから怖ろしい。

そういうのは、子供の面倒を見る親だけが言える言葉なのだと思っていた私は、素直に面食らう。

「知らなかったわ、パパ。
ゴメンナサイ」

「大丈夫、大丈夫。
都も子供を持てばきっと分かる日が来るよ」

残念だけど、パパ。
私には好きな人と結ばれる日なんて来ないのよ、永遠に。


と。
私は心の中でそっと、呟いてみる。