Melty Kiss 恋に溺れて
「すみませんっ。
眠ってしまいまして」

ぺこりと。
私は頭を下げる。

大き過ぎるテーブルを囲んで、数人がそこで食事をしていた。

その中に居る和服姿の美人な女性が、丁寧な仕草で茶碗を置いて私を見た。
そうして、にこりと妖艶ともいえる笑顔を浮かべる。

「あら、いいのよ、都さん。
ご飯が冷めてはいけないと思っただけなのだから。
早くこちらにいらっしゃい」

私は姐さんのことを、お母様と呼ばせてもらっている。

「具合が悪いんじゃないの?」

なんて、本当の母親のように私を心配してくれる。
お陰で、私は小さい頃、本当に大雅は私の兄で、姐さんが母親だと信じていたくらいだ。

とてつもなく規律が厳しいこの世界の中心のようなこの場所で、私はずっと甘やかされて生きている。

「いいえ、ちょっと疲れが出たみたいで」

「まぁ、大変。
今日は早くおやすみなさいな」

「ありがとうございます。
でも、珍しくパパが帰ってきちゃったので」

「あんな男放っておけばいいのよ」

とても、本人が同じ食卓についているとは思えないような軽い口調でお母様が言う。
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