Melty Kiss 恋に溺れて
3.大好きなあの子を想う
◇大雅Side◇

コンコンコン コンコンコン
コンコンコンコンコンコンコン

……ドアのノックが、三三七拍子。

こんなふざけたノックを恥ずかしげもなければ悪びれもせずにやってのける人間なんて、世界に独りしかしらない。

「開いてますよ」

ドアに向かってそう言った。

「久しぶり、大雅くん」

遠慮もなくドアを開けたのは、予想通り。
我が銀組の若頭であり、実質親父(総長)に継ぐ実力者。

紫馬宗太さんだ。

「そうですね、ご無沙汰してます。
今回はどちらの女性と戯れていらっしゃったんですか?」

革張りの椅子から立ち上がりもせずに礼だけ返した。

非礼なのは百も承知だが、こう、元気が出ない。

紫馬さんは煙草に火を点けながら部屋の中へと入ってくる。
俺の皮肉は聞き流すことに決めたらしく、柔らかい笑みを浮かべている。

「おやおや。
元気が無いのはうちのプリンセスだけかと思ったら。
プリンスまでも、お悩み中ですか?」

ふざけた口調はいつものこと、咎めるだけ時間の無駄だ。
それよりも、別のことが気になった。

「都さん、どうかしたんですか?」

彼女の名前を聞くだけで、こうも胸が掻き乱される。
俺は、紫馬さんに勧められるがままに煙草を銜えた。

さっと火を点けてくれる手際の良さには毎度のことながら、心底感心してしまう。
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