Melty Kiss 恋に溺れて
都さんは他の皆と違って<極道>の者じゃないから、大事にしなきゃいけないって周りの大人が皆揃ってそういうから、それだけはすごく気をつけていた。

彼女と喋るときだけは、一人称は<私>。
声だって、物腰だって、出来るだけソフトにしようと思った。

そうしたせいか。
彼女が俺に懐くのは早かった。

単に一番年が近かったせいかもしれないけれど。

皆が俺を『次期総長』と呼ぶので、彼女も俺を『ジキソーチョー』と呼び始めた。
でも、極道じゃないのに総長なんて言葉は不要だろう?

『お兄ちゃんって、呼んでみて?』

彼女が『ジキソーチョー』と言う度に、言葉を訂正する。
矯正するのはそんなに、難しいことではなかった。

多分、それがあまりにも簡単で面白かったんだと思う。
彼女はまるで真っ白いキャンパスで、俺の言うことはなんだって真似るし、俺のすることもなんだって真似た。

『キスして』と言ったら素直にキスするし、『大好き』と言えば、オウムのように『大好き』と無邪気に繰り返す。俺が『長い髪が好き』と言ったから、彼女は今でも腰まである艶やかなロングヘアを保っているほどだ。

武道も真似れば、拳銃だって平気な顔して握って見せた。


いっそ、俺が射精を覚えた頃に『抱かせて』と頼んだら、抱かせてくれていたに違いない。意味もワケすら分からずに。

まぁ、さすがにそんな非常識な小学生ではなかったので、そういうことは言わなかった。

むしろ。
周りの女子から迫られてばかりで辟易していた頃だったので、そういう気になれなかったのかもしれない。
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