Melty Kiss 恋に溺れて
「どうぞ」

と。
生徒指導室のドンであるには似つかわしくないほどの甘い笑顔を浮かべて、渡辺先生が私を出迎えてくれた。

指差された椅子に座る。

それは、清水さんのような<優男風>ではなく。
本物の、優しい笑顔。
作り上げていない、甘いマスク。

で、女生徒たちからきゃぁきゃぁ言われているのも分かる気がした。

「今朝は、本当にすみませんでした」

「いいよ、別に」

しゅんとした私を、慰めるかのように渡辺先生は相好を崩す。
私が大雅に惚れてなかったらきゅんとくるかもしれない、と、想像がつくくらいの柔らかくて甘い笑顔だ。

「ただ、皆の手前注意しないわけにはいかないだろう?
それに」

と言って、一息つくと緊張を飲み込むかのように、彼は。
冷めた珈琲を一口飲んだ。

「八色と二人で喋ってみたかったし」

……す、ストレート過ぎませんか?
  それって、小学生!?

あまりにもストレートな告白は、私から見たら羨ましくてまた、微笑ましくもあった。
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