Melty Kiss 恋に溺れて
「紫馬さんが、都さんを決して紫馬姓にしないのと同じ理由ですよ。
だけど、こんなに暴走する都さんの面倒を見るほうがずっと大変だと気づきました。
それに、都さんは案外に真面目で、配偶者として迎え入れないとその身体には触れさせてくれなそうですし」

……!!

さらりとすごいことを言われて、私は目を丸くする。

「お、兄ちゃん?」

「あれ?もうそういう風には呼ばないんでしたよねぇ」

意地悪だ。
とてつもなく意地悪で。

「大雅」

促されて仕方なく、私は彼の名前を呼ぶ。

「はい、都さん☆」

自分で呼ばせたくせに、嬉しくて仕方が無いという風に顔を綻ばせるのは、私が彼の手から婚姻届とペンを受け取ったからだろう。

用意されていたスペースに、自分の名前を書き込む。

なんていうか。
あんなに募る恋心が昇華されるには、この展開はあっけなさすぎると思ったほどだ。

「はい、完成。
後はこれを来月末のパーティーで、皆に公開するだけですね」

大雅は婚姻届を丁寧に折りたたんで、また胸ポケットへと片付けた。

そうして、今度は内ポケットから小さな箱を取り出してみせる。

「だから、その日まではこれをつけていて下さいね」

と。
高校生には大きすぎるダイヤのついた、エンゲージリングを取り出して私の左手薬指にはめている。

どうやって人の指のサイズなんて知ったのか。
とてつもなくぴったりのサイズだ。

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