Melty Kiss 恋に溺れて
大雅は優しさをこめたため息を吐いて、困ったように目を伏せた。

キスできそうな近さまで、顔を近づけてくる。

うう。
心臓に悪いっ。

「うちのなかに永遠に閉じ込めておきます。
次にトラブルに飛び込んだら、本当にもう、この手を放しませんよ」

息が直接私の唇に触れるほど間近でそう言うと、挨拶代わりのキスを私の頬に落とし、ぎゅうと抱きしめられた。

……説教されていると言うのに、ドキドキが止まらない。

私が街のチンピラに絡んでしまうのは、その後に大雅がこうやって説教してくれると知っているからに他ならない。

本当にこの手を放してくれなければいいのに、と。
そう願わずには居られない。

大好きな、大雅の胸元の上質なシャツにそっと耳を寄せる。

でも。
大雅の心臓は腹が立つほど、緩やかなっていうか、正常な速度で動いているのだ。

そう。
これこそが、彼が私のことを妹にしか見てない証拠。

実際。
私は中学を卒業するまでずっと、大雅のことを【お兄ちゃん】と呼び続けていたのだから無理も無いことなのかもしれない。

それが嫌で、高校に入ると同時に【大雅】なんて名前で呼んでいるのだけれど。
彼は嫌がるでもなく、喜ぶでもなく。
淡々とそれを受け入れるだけで。

恋する乙女としては一体、今後どうすればいいのか迷ってしまうばかりなのだ。
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