Melty Kiss 恋に溺れて
放さないで、と言いたい気持ちを抑えて黙って大雅の腕に抱かれていた。

もうすぐ車はお屋敷に着く。

ずっと押し黙っている私のことを、「反省している」と大雅は捕らえたのだろう。

さっきまでよりも、さらにさらに甘く優しい声で私の耳元に囁く。
正直、心臓どころか身体の髄から溶けてしまいそうなほど、甘い声。

「都さん、そんなにしょげないでください。
もう、怒っていませんから」

いい子いい子、と。
小さな子供にするように、優しく私の髪を撫でる。

お屋敷に車が止まって、私はようやく大雅の膝から降りて、車からも降りた。

ずっとこうしていたいけれど、それはあまりにも不自然なのだから仕方が無い。


大雅は私の部屋まで着いてきてくれた。
そう、ありがたいことにこのお屋敷にはきちんと私用の部屋まで作ってあるのだ。


大雅は躊躇うことなく私の部屋に入り、後ろ手でドアを閉めた。

「都さん、反省しましたか?」

と。私の瞳を真っ直ぐに見て、優しい声で聞く。

私は仕方なく、こくりと頷いてみせる。


そうすると、大雅は。

私が落ち込むたびに、小さい頃からそうしてくれたように

「紫馬さんには秘密ですよ」

と言って、私の顎を持ち上げ、唇に溶けそうなほど甘い触れるだけのキスを落とす。

誰にも知られていない、二人だけの秘密のキスを。



これで恋に落ちるなと言う方が無理な話で。

だけど私はいまさらこの人に、どう告白すれば良いのかも分からないでいた。
< 7 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop