Melty Kiss 恋に溺れて
「お……お兄ちゃん?」

あまりの出来事に驚いて、思わず私は封印していた敬称を取り出してしまったほどだ。

だって、大雅は私が15歳になってからはキスしないようにしていたはずなのに。

例えば私が12歳の誕生日を迎えた日。

『今日からはもう、添い寝しない』

と、彼は言った。


そうして、私が15歳の誕生日を迎えた日。

『今日からはもう、唇にキスしない』

と、彼は言った。


そうやって、いつも急に勝手に別れの宣言をしていくくせに。

(だからそれを真似て、高校の入学式の日に『今日からはもう、お兄ちゃんって呼ばない』って言ってみたんだけどね、私も)

どうしてまた、急に思い出したかのように唇にキスを?


すると、彼はいたずらを咎められた子供のように視線を伏せた。
長い睫に、どきりとする。

そうして、鳶色の瞳をあげて、再び私を見つめた。

「都さんが私にあまりにも心配をかけるからですよ。
高校に入ってから、毎日のようにトラブルを抱えてくるじゃないですか。
反抗期だと思って大目に見てあげているのに、ちっとも反省する気が無い」

「反省しなかったら、キスするの?」

嬉しいけれど、それは筋が通ってない気がする。
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