奴隷と悪魔



 自習が終わり、1時間目が始まった。


 あれ?あれ?


「どうしたの?」


 私があせって何かを探しているのに気づいた深君は、私に声をかけた。


「いや、えっと・・・あの・・・」


「?」


「教科書忘れちゃって・・・」


 私が恥ずかしそうにそういうと、深君は机を私の机にくつけて、教科書をみせてくれた。



「あ、ありがとう」


「ううん。でもさ、新学期早々教科書忘れるって(笑)」



「あはは・・・。ごめんね。色々とあって・・・」


「そっか・・」


 普通なら、その色々って何?


 とか聞いてくる人がほとんど。


 でも深君は聞いてこない。


 気づかってくれてるんだと思う。


 たぶん私が泣いてたことに関係してると思ってるから・・・。


 何もかもやさしいんだね。深君。








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