奴隷と悪魔



 やさしかった深君・・・。


 『ありがとう』なんていってよかったの?

 
 私には謝ることしかできないと想ったよ。


 数日だけだったけど、ありがとう。


 ありがとう。深君。


「別れたけどさ、いつものように話してくれる?」


 深君は優しく話しかけてくれる。


「もちろんだよっ。ヒクッ・・・」


「ありがとう。それじゃぁ、もう帰らないとお母さんとか心配するんじゃない?」


「うん。それじゃぁ・・・。バイバイ・・っ」


「バイバイ」


 私は泣きながら家に帰った。


 深君は何回も『ありがとう』って言った。


 深君にありがとうって・・・。


 私は言われる資格なんてなかったよ。


 でも、ありがとう。深君。


 あなたがいたから私は頑張れたよ。


 ありがとう。

 




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