奴隷と悪魔




 私が声をかけたあの人。


 あの人とは


 『芥川茉里唖』。


 今すごく気まずい関係なのはわかってる。


 だけど、少しでもいいから話したかった。


 なんだかわからないけど。


「今たってる噂・・・。


 俺と美衣菜と沙神の。


 俺にふられたお前が、沙神とつきあって、俺と白能美がわかれたとたんに沙神とお前が別れた。

 っていう噂。

 お前が俺と沙神の二股系なかんじで付き合ってるってとかいってるやつとか、お前が調子乗りすぎ、とか言ってたやつもいた」


「・・・」


 私は無言だった。

 
 はっきり言って、その噂は少しあたってる。


 私は茉里唖のコトが好き。


 でも深君を利用して茉里唖のことが好きなまま深君とつきあった。


 そして茉里唖と芭衣ちゃんがはなれたら、私と深君も別れた。


 茉里唖と芭衣ちゃんはつきあってなかったけど。


 
 女子たちが言いたいことって・・・


 『深君利用するとか酷い』とか、


 『芭衣ちゃんと別れたスグに茉里唖をとろうとするとか卑怯』とかかな。

 
 確かにそうかもしれないな。


「ありがと、茉里唖。それじゃぁね・・・」



「美衣菜っ・・・」


 ・・・久しぶりに茉里唖に呼ばれたような気がする。


 なんだかちょっと嬉しい。


 ・・・でも、私は酷いヤツなんだ。


 茉里唖のそばにはいちゃいけないよね。


 茉里唖と話しちゃいけないよね。


 これ以上


 深君と、茉里唖と一緒にいちゃいけないよね。


 もう、茉里唖を好きでいちゃだめなんだよ。きっと。


 皆のざわめきでわかったよ。


 茉里唖のことが忘れられなくても、だめなんだ。


「私っ・・・。教室戻るからっ・・・!」


 私は教室まで走った。


「ちょっ・・・」


 茉里唖は何か私に話があったんだよね、きっと。


 でもごめんね。


 これ以上私みたいな酷いヤツと一緒にいたらだめだよ。


 茉里唖・・・。





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