奴隷と悪魔



「はぁ・・・」


 教室に戻った私は、深いため息をつく。


「どうかしたの?美衣菜」


 いつものように優しく問いかけてくる深君。


「ううん。それより深君。もう私と一緒にいないで」


 私の突然の一言。


「え?」


 深君はとても驚いている。



「私酷いヤツだから。酷いヤツだから、深君みたいないい人とは一緒にいちゃいけないよ。私は1人でいなきゃいけない」



深君は、私の言葉に驚いてはいたけど、冷静に返答してきた。


「・・・俺は、美衣菜がどんなに酷いヤツでも美衣菜のそばにいる。たとえ美衣菜の周りに誰もいなくなっても、俺はちゃんとそばにいる」


 やっぱり優しいね。深君。


 でも、私は


 あなたを利用した。


 茉里唖を忘れようとして、深君とつきあった。


 でも結局茉里唖が好きで、深君とはすぐに別れた。


 深君を利用して、絶対傷つけた。

 
 いつも笑って話しかけてくれるけど、とても傷ついてるんだと思う。


 無理して私に笑いかけてくれるんでしょう?



「でも・・・」


「でもじゃないよ。俺はそばにいる。美衣菜が泣いても、俺がいる。・・・友達としてね」


 ズキッ・・・


 とくる。


 特に最後の


 ≪友達としてね≫


 って言葉。


 ・・・やっぱり傷ついてるんだ。


 どうしよう。


 私は誰とも一緒にいちゃいけないのに。


「深君。やっぱり無理だよ。私は酷いから」


「酷くてもそばにいる」


「ううん。深君まで酷くなってしまうから」


「それでもかまわない」


「かまわなくないよ!全然っ・・・」


 私は泣き出した。


 つらいよ。こんなの。


 深君と一緒にいたら、また深君を利用してしまうかもしれない。


 深君の優しさに甘えてしまう。


 深君を・・・傷つけてしまう。


 だから、だから私は深君とは一緒にいれない。


 絶対に、一緒にいてはいけないんだ。




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