君の声が聴こえる。

疎外感から解放される喜びで胸が高鳴っていたのだが、声が醜いのを思いだした。

辺りを見回して紙となにか書けるものを探す。

テーブルの隅にアンケートがあるのを思い出し、位置を大幅に移動した。
しかも、森田の前。

私が森田に気があるみたいじゃないか。

アンケートを取り出して一緒に置いてあった文字を書く。

『ケータイについてるキーホルダー持ってる。』
森田の肩を叩いて書いた紙を見せる。

紙に目線を向けると静かに字を書き出した。

『なんで、しゃべんないの。』

紙をスッと私の前に置くとまたケータイに目を落とした。

はるかに私より字が綺麗で、なんかむかついた。
『声が酷いんだよ。声出したくない。』

森田は紙を見ると口を開いた。

「紙に書くのめんどいからメールにしてくんない。」

そして、自分のアドレスを新しいアンケートの裏に書いて渡してきた。

…本当にケータイが友達なんだ。

もらった紙のアドレスを登録してメールをした。
『ゆうりってどおやって書くの?』

『優璃』

返信がものすごいスピードで返ってくる。

『字だけだと女みたいだね。』

『よく言われる』

なんか、こいつとメールしてると疲れる。

疲労と眠気に負けて寝ようと思ったが

「じゃあ、おひらきしようか!!」

の声が聞こえると立ち上がり、篤那の側へ言ってアイコンタクトをとったが

「ごめんっ!園田君が送ってくれるって…」

上目使いで見てきたので首を縦にふるしかなかった。

< 10 / 15 >

この作品をシェア

pagetop