君と出会って
「…真由?」

その夜、ベッドの中で。

肩を震わせている真由に気がついた。

「どうしたの?」

俺はそっと後ろから真由を抱きしめる。

「…ううん、なんでもない」

真由は手の平で涙を拭いた。

しばらく、ベッドの中で真由を抱きしめていると

「そーちゃん」

真由が俺にこう言った。

「…いつから、賢司さんの事、知っていたの?」

少し、非難めいた口調だった。

「少し前からだよ」

そう言うと真由は俺の手を叩いて

「ズルイよ。どうして教えてくれなかったの?」

少しふて腐れた様子だった。

「それは社長と俺の約束だったから」

「ふーん…。でも…こっそりで良いから言って欲しかったな」

そう言われた瞬間、俺は罪悪感に包まれた。

判断を間違えている。



真由には誰にも言うな、と言い聞かせて話しておくべきだったんだ。

真由にとって、賢司さんは本当の義父になるし。

何より、俺は真由に隠し事をした事になる。
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