君と出会って
そんな、ふと苦い思いを思い出した。

「真由、帰るよ」

俺は真由から預かったアルバムを適当な袋に詰める。

真由は下を向いたまま、何の反応もない。

「…言わなかったのは悪かったよ、ごめん」

ここでちゃんと伝えなければ。

永遠にすれ違っていくような気がする。

「…でも、俺の立場もわかってほしい。
伝えたくても伝えられない時があるんだ。
真由が嫌いとか、言うのがだるいとかそういうのじゃなくて…」

俺は大きくため息をついて

「真由を大好きな事には間違いないから」

さっと立ち上がって出入口に向かう。

それ以上の言葉は見つからない、今の俺には。



「そーちゃん!待って!!」

真由の声が後ろから聞こえた。

振り返ると真由がベッドから降りてこちらに向かっていた。

「ごめん!」

歩くのも辛そうな真由は必死に俺を追う。

俺は慌てて真由を抱き抱えた。
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