君と出会って
レースで一番になりたかったといえば確かになりたかった。

でも、なれなくてもよかった。

ただ、俺は。

走っていたかった。

そこには仲間がいて、応援してくれる人達がいて。

そう考えたら堪らなくなって俺は書類を置いて祥太郎の隣に座る。

そしてアルバムを手にして開いた。

確か、あるはず…

一番幸せを感じたあの時の写真が。

勝てなかったけど…

幸せだったんだ。



「この頃って…」

一緒にアルバムを見ていたお客さんが指差した写真。

「何か、楽しい事がありました?
いい表情をしているから」

そう、これだ。

「そうですね、…すべてが楽しくて幸せでした」

俺はそのお客さんに笑って答えた。
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