君と出会って
「わー!」

祥太郎はレースクィーンの衣裳を身に纏う真由を見て思わず声を上げた。

俺も普段から真由を見ているとはいえ、目を見開く。

その前年、つい7ヶ月前に睦海を産んで、授乳もしているのに。

体型をほぼ戻して少し恥ずかしそうに俺を見て微笑んだ。

3月に19才になったばかりの真由は。

まだまだ『可愛い』という言葉が似合う。

けれど1児の母。

…そう、見えない。

4月の開幕戦に体型を戻してくるとは。

やるなあ…

ある意味、根性は凄いのかも。

俺も見習わないとな。



「そーちゃん、変じゃない?」

パドックでしきりに聞いてくる。

「変じゃないよ、真由」

何度聞かれても、そう返した。

その度に真由は少し笑って頷く。

「自信持ちなよ。
…他のチームにいる子達よりも綺麗だから」

「それはないない」

真由は首を横に振るけど。

俺から見ると、真由は本当に凄いよ。

彼女達はほとんどがプロだよ。

真由はたまたま俺達のチームにレースクィーンがいないから、やってもらっているだけ。

雇うとお金もかかるし。

チームにはそんなお金は…全くないから。

俺達みたいなチームだとみんなライダーの家族や知り合いやヘルプなどがパラソル持ったりする中で。

真由は…本当にモデル顔負けに凄い。

俺が言うのも可笑しいかもしれないけど、真由がこのチームのレースクィーンをし始めてから。

カメラを構える人が増えたんだよ。

チームにもスポットライトが当たり始めたんだ。
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