君と出会って
去年までなかった姿がチームのパドックに見える。

睦海…

端で真由に抱かれている。

その周りに彩子さんやチームのみんなが空き時間に相手をして、賑やかだ。

雰囲気がうんと良くなっている。

戦いの場所だからフレンドリーな雰囲気はいらない、と言われるかもしれないけど、このチームが活気づくのはそういうフレンドリーな雰囲気があるときだと、昔から思う。

でも、やる時は真剣。

それでいいと俺は思う。



「じゃあ、睦海」

決勝レース前、俺はそっと睦海の頬を撫でた。

睦海はレーシングスーツを着ている俺を不思議そうに見つめている。

「ちゃんと見とけよ」

そう言うと睦海は意味がわかっていないはずなのに、笑顔を見せて俺の人差し指を握った。

…きっと自分の思う走りが出来る。

レース前だけど、確信した。





その日の決勝では3位に入り開幕戦では初めて表彰台に上がった。
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