君と出会って
予選、1位。



初ポールポジションを取った俺。

自分でも少し、驚いていた。

目の前に優勝がちらつく。

これで最終戦はポールポジションからスタート出来る。

けど…2番手には隆道。

そう簡単には勝たせてくれない。



決勝の朝。

緊張で少し早く起きた。

まだ陽が登り始めるまで少し時間がある。

窓際から薄明るい東の空を見つめた。

「そーちゃん?」

振り返ると真由が心配そうに俺を見つめていた。

「ごめん、起こした?」

真由の腕を引き寄せ、抱きしめる。

「横にいなかったから」

俺の肩に顔を埋めながらそう言う。

真由の体温が心地よくて、俺の変な緊張が解れてきた。

しばらく抱き合う。



「ぱ…」

ベッドから睦海の声が聞こえる。

真由を抱きしめたままベッドを凝視すると。

睦海も俺達を探しているみたいでキョロキョロしている。

「睦海…?」

少し、名残惜しいけれど真由から離れてベッドにいる睦海に近付く。

睦海は目を輝かせると俺に抱き着こうと手を広げた。

俺も睦海を抱き上げると

「ぱぱ…」

はっきりと聞こえた。

初めて、睦海が俺の事を呼んだ。

「睦海…?」

「ぱぱ…」

「ま、真由、今、睦海が…!」

振り返ると真由が不機嫌そうに

「なんでー!そーちゃんが先に呼ばれるの!!
なんで私じゃないのー!」

と、俺の背中を叩いた。

俺に当たるなよ…

「ままー」

睦海は真由を見つめて笑った。

「むっちゃん!もう一回!」

睦海の一言で真由はすっかり機嫌を直して睦海に何度も『まま』と呼ばせていた。

こんなサプライズがあるなんて。

今日は幸先が良いかも。
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