君と出会って
「そーちゃん、ドキドキしたよ!」

真由が肩をポン、と叩いた。

「…ドキドキ?」

思わず聞き返す。

俺は必死だったから、よくわからない。

「うん!コーナーでそーちゃんの体がいつもより内側に入っていたよ」

「…あ」

そういえば。

いつもより地面が近かった。

アクセルを開けるのも早かった気がする。

「優勝出来ると思ったけど、あと少しだったね」

真由は穏やかに笑って

「お客さんも大興奮だったよ!
あんなライディングをされたらそーちゃんに無関心な人も思わず見ちゃうよ!!」

真由は興奮していた。

「俺も今日のそーちゃんは凄いって思ったよ」

至もいつの間にか俺の後ろに来ていた。

「間違いなく、そーちゃんは日本でトップクラスのライダーだよ」

そんな事、意識した事がなかった。

俺の前には常に隆道が。

隆道だけじゃない、他にも追いつけないライダーがたくさん。

「ほら、見てみなよ」

今、まさにピットウォークが始まって、ウチのピット前には見た事のない行列が。

「そー、次のレースに集中したいならこのまま下がるか?」

監督の賢司さんの声が聞こえた。

俺は振り返って

「いえ、みんなと触れ合ってきます」

そう言って笑った。

「さあ、真由、行こう」

声をかけると真由はパラソル片手に、うれしそうに頷いた。
< 67 / 107 >

この作品をシェア

pagetop