君と出会って
今まで、自分の走りをする事に必死でどんな風に見られているかなんて考えた事がなかった。



「見ていて興奮しました!」

緊張気味にサインを求めてくる子。

「ありがとうございます」

サインをして頭を下げて握手をする。

「午後からも頑張って!」

「楽しませてくださいね」

色んな言葉が掛かる。

遥々遠い所から見に来てくれた人もいる。

親子で楽しそうに見ていてくれる人もいる。

俺以上に必死になってくれている人もいる。

走る事は自分の為、最高な状態にマシンを仕上げてくれる周りのスタッフの為。

もちろんファンの為、もあるけれど。

俺を知らない人達が俺を見て興奮してくれるなんて。

そしてこんな風に声をかけてくれるなんて。



絶対に後悔するような走りは出来ない。

自分が後悔する走りなんて、周りから見れば最もつまらないから。

来てくれる人に夢を与える事が出来れば…

大興奮で楽しんでもらえたら…

また自分の走りを見た子供達が将来、ライダーを目指すきっかけになれば…

そう、思った。
< 68 / 107 >

この作品をシェア

pagetop