彼女が天国にさらわれました。
電車に揺られ、帰り道にコンビニ弁当を買って、家に帰る。
「…ただいま」
そう言うと、駆け寄ってくるはずの優里。
今日は駆け寄ってこない。
リビングに行き、テレビをつけてソファーに座る。
『夕飯作ってあげちゃおっかなー』
そう言う声もない。
ただボーッとテレビを見つめていた。
いつもだったら、帰ってくると抱きついてきて、『ただいまのチューは?』って言ってきて、一緒にソファーに座って笑い合っていたのに。
今日はその笑い声が無い。
「……飯食お。」
乱暴に袋から弁当を取り出し、弁当をあけて、割り箸を割る。
コンビニ弁当独特の匂い。
いつもだったら腹ペコでいっぱい食うんだけど、箸が重たい。
お腹は空いてるのに、食べる気になれない。
ハンバーグを箸で小さく切り分け、その一つを口に放り込む。
ご飯も口にかき入れて、無心で食べる。
テレビではタレント達が楽しそうに話をしてて、俺の今の現実とはかけ離れていた。
優里が死んだのだと認められない自分が居る。
まだ生きている、今日は用事があるから家に来ないだけだ。
そう言い聞かせて居る。
おいしいはずの飯も、一人だとうまく感じない。
「死んだのか…」
今は霊安室に居るのか、あいつは。
暗いとこ怖がるからな、大丈夫かな。
そんな事を考え、残りのご飯を全部口に入れた。
俺は明日も仕事。
食べ終えた弁当の容器をゴミ箱に投げ入れ、寝室に行き、ベッドに倒れ込む。
「優里…何してんだかなー。」
そう呟いて、俺は一晩中寝れない夜を過ごした。