彼女が天国にさらわれました。
火が放たれた。
中で燃える音が聞こえる。
優里が燃える音が聞こえる。
黙ってそれを見つめていた、何も考えられなかった。
ふと母親の雅子さんを見ると、静かに涙を流している。
泣きたい、けど涙が出てこない。
人は本当に悲しいと涙が流れないと言う。
俺は悲しいのだろうか。
そこに居るのが嫌で、俺は外に出た。
外は木々に囲まれていて、気持ちが良かった。
ただ空を見つめる。
鳥が飛んでいる、泣き声が聞こえる。
その当たり前な風景にため息をつく。
「何してるの?結くん。」
そう言われて振り向くと、そこには優里と仲良しだった水谷有希が居た。
「あ、有希ちゃんか、誰かと思ったよ。」
「ずいぶん顔が疲れてるみたいだけど、寝てないの?」
「あぁまぁ…」
彼女は俺の隣に立つと、少し笑って言った。
「優里は幸せだったと思うよ。」
「え…?」
「だからそんな辛そうな顔しないで…。」
そう言われて、俺は下を見下ろす。
あいつは本当に幸せだっただろうか。
俺はあいつのために何か出来ただろうか。
何も考えられない、わからない。
「結くん?」
「あぁごめんね、ありがとう。」
そう言うと彼女は悲しそうに笑った。
この時俺には彼女がなんで悲しそうに笑うのかわからなかった。
いや気づかなかった。