Dsire
「…ここは?」
見たこともない白い世界、霧がかかっているのか前もよく見えない。
「よく来たなお前等。」
女なのか男なのかよくわからない声、低く呟いた声が耳に入り、後ろを振り返る。
「誰だそこに居んの?」
「誰って案内人だよ、お前等の。」
霧が消えて、あたりは白の世界。
そびえ立っている大きな黒い扉と白い扉、その真ん中に声の主は立っていた。
「よぉ。」
見えたのは灰色の和服姿に黒の長髪を後ろで低く結んでいる男。
紫色の瞳が印象的で、つい見とれた。
だが一体ここはどこだ?
「ここは一体どこなんだ?なんで俺が居るんだ?」
疑問をぶつけると、彼は面倒くさそうに答えた。
「ここは狭間だ、死んだ奴の行き道を決める場所。」
「は?じゃあ俺死んだの?」
「ちげーよ、選ばれたんだよ。」
「選ばれた…?」
周りを見ると、俺の他にも人が居るみたいだが姿が見えない。
おちゃらけた声の男が言い出す。
「選ばれたってなんか当たったのー?旅行券とか。」
「旅行券なんてありゃしねぇよ、紹介が遅れたな、俺は埜雲(やぐも)っていうんだ、狭間の番人をしてる。」
そう言うと埜雲は周りを見渡した。