クライシス
「そうか」
雄介は言葉を止めた。由香は雄介を見る。雄介は遠くの方を見ていた。
「無理、なんやね……?」
由香が言うと雄介は少し笑った。そのまま雄介をジッと見つめる。
風が吹く。冷たい風が。
由香の瞳から涙が出て来た。
雄介は空を見上げた。白い物が落ちて来た。
「雪や……」
雄介が呟く。由香も空を見た。
静かに、そしてゆっくり、雪が舞い降りて来る。
「雄介」
由香が鼻をすすった。
その時、雄介の携帯が鳴った。見ると二谷からだ。由香をチラリと見て電話に出る。
「もしもし」
『立て込み中に済まない。そろそろ時間だ』
二谷がそう言う。相変わらず、どっかで見ている様な口ぶりであった。
雄介はチラリと由香を見る。
「わかりました……」
『迎えを寄越す』
それだけ言うと二谷は電話を切った。
場所を言って無いけど。分かるんだろうな……。雄介は思った。
そして由香を見る。由香は心配そうに雄介を見ていた。
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