クライシス
涙に濡れる由香の顔が雄介をみつめる。
「ホンマに……?」
由香が尋ねる。雄介は頷いた。
「当たり前やろ……!」
雄介が笑いながら、そう言うと立ち上がった。
上空を旋回したヘリコプターがゆっくりと降下して来る。由香はビックリして、それを見つめた。
ヘリコプターは二人の目の前のグランドに着陸した。
雄介は由香を見て微笑んだ。
「じゃあ……!」
雄介はそう言うと、由香に背を向けて、ゆっくりとヘリへと向かい歩き出した。
由香は立ち上がる。そして叫んだ。
「雄介ー!」
由香の声に雄介は振り返る。
「絶対に、絶対に待ってるから!約束やで……!」
由香の叫びに雄介は微笑み、そしてヘリに乗り込んだ。
雄介を乗せたヘリはゆっくり浮き上がる。
雄介は窓から由香の姿を見つめる。
由香はずっと雄介を見上げていた。
雪が静かに、由香の周りに降り注いでいたーー。




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