クライシス
飛行機が加速を始めた。雄介は外を見続ける。
そのまま、飛行機はゆっくりと機首を上げて空へと浮き上がった。
いよいよ、なんだな。雄介は思った。
窓の外に大阪の街が見えている。何万人、何百万人の人々がこの下で暮らしている。
由香……。雄介は由香を思った。胸が熱く成った。
必ず、必ず戻って来る。由香……!
ーーそう熱く成っていたのは、離陸して二時間程だった。雄介はグッタリしていた。
狭い。暇だ。歩き回りたい。雄介は飛行機に飽きていた。
学生時代に友達とグアムに行ったが、その時は友達が一緒だったので暇が潰せた。が、今回は一人だ。
隣の外人客のイビキとコロンの匂いがきつくて眠れない。
もう、真っすぐ北朝鮮に向かおうよ。雄介は、そう思っていた。








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