クライシス
木下がそう思っていると机の卓上電話が鳴った。

内線だ。


「はい、木下です」


<河野だ>


相手は警察庁警備局局長の河野であった。


河野は全国の警備、公安、外事のトップである。

そして、元チヨダの校長であった。


「お疲れ様です」


<まだ、庁内に居るなら・・・飯でも食いに行かんか?>


「はあ・・・」


<机に座って悩んでも答えは出ない・・・飯を行こう>


「わかりました・・・10分後に下に降ります」


木下はそう言って電話を切った。


河野は木下の東大の先輩だ。


もちろん、キャリアは東大が多いが、同じラグビー部だったので親交が深いのだ。


10分後、ロビーで落ち合った二人はタクシーで赤坂に向かった。


赤坂にある小料理屋に到着すると、女将に奥の個室に通された。


酒と料理が来ると河野は女将に言って、人払いをした。


「まあ、お疲れさん」


そう言って河野が木下のグラスにビールを入れた。


「ありがとうございます・・・」


木下も河野に酌をして乾杯した。


「で・・・どの辺まで分かった?」


河野の言葉に木下は首を振る。


「殆ど分からないに等しいです・・・」


「そうか・・・」
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