クライシス
―― 一月五日十時 大阪市府警警察病院――
 雄介は四日の夕方に舞鶴港に到着した。舞鶴港には、警備局長の河野とゼロの校長の木下が出迎えてくれた。二人は雄介と涙ぐみながら握手をした。
 河野が自分の携帯電話を雄介に渡す。電話に出た時に驚いた。
『内閣総理大臣の桜井です』
 総理大臣!雄介は驚きすぎて鼻水が出そうになる。
「あ、あの、お疲れ様です!え、あの市橋です……」
 雄介がテンパる。
『この度はお勤めご苦労様でした。君のお陰で日本が救われそうです』
 そう言われて雄介は焦る。
「いえ、こちらこそ、自衛隊を派遣して頂いてありがとうございます」
『命懸けで国の為に行動した方を救出するのは当たり前ですよ』
 そう言って電話を切った。雄介は、頭がボーッとしたままヘリに乗り、大阪へ向かった。大阪が再び本部と成るからだ。
 後は、韓国大統領の訪問までに残り一つのウイルスの在りかを捜す。なるべくならば、抗ウイルス薬を使う事なく、この困難を乗り切りたい。全員がそう思っていた。
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