クライシス
「と言う事は、ウイルスは残り一個しか無いんやな？」
　赤木が雄介に尋ねる。
「はい。ソースは言え無いっスけどね」
　その言葉に川村が頷く。
　彼だけ自己紹介はされていないが、恐らくは刑事じゃない。公安関係だな。雄介はそう思った。最近、その辺りの見分けがつく様になってきた。
「うーん、て事は是が非でも、イ・ミンホンを捕まえなきゃならんて訳か」
　井上が呟いた。
「イ・ミンホン？」
　雄介が尋ねる。その言葉に川村が頷いた。
「北朝鮮の工作員です。彼が北京空港に居た事が目撃されています」
　川村は続けた。
「彼は一流の工作員。整形をして、その国の警察、軍隊に忍び込む事を得意としています」
「と、言う事はそのイは警察関係者に成り済ましをする、と言う事っスか？」
　雄介の質問に赤木が答えた。
「そうや。恐らくは韓国大統領が来日に際して日本の警察に成り済まして、警備の目をかい潜り実行しよう言う事やろう」
　赤木の言葉に雄介は頷いた。それが一番現実的そうな作戦だ。雄介がそう思う。
「え？そのイが発見されたのはいつですか？」
　赤木と川村が顔を見合わせる。
「年末、計算から行くと既に日本に潜入しているやろう」
　既に潜入？雄介に不安が広がった。





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表紙・目次

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