クライシス

由香の言葉に雄介は口を大きく開ける。
「え？」
「それを阻止するタメに、雄介はアメリカに行ってたんやろ？」
　由香が雄介を見つめる。雄介は一瞬、ボケっとしたがすぐに察した。
　教授、ゴメンなさい。そして、誤魔化してくれてありがとう。
「そ、そうやな。うん、まあ、詳しくは言えんけど」
　雄介はごにょごにょと答えた。
「お疲れ様」
　由香が笑う。
「いやいや、まあね」
　確かに、大阪でテロが起きるとか、俺が北朝鮮に行ってたとかは言えんわな。雄介は少し笑った。
　ちょっと日本に戻ってきて少し呆けてた。諜報の世界では内容を漏らす事ほど有りえない事は無い。身分や経歴――うん？
　雄介の頭に何かが引っかかった。なんだ？何か、凄い違和感がある。何だ？雄介の頭がフル回転する。
　何か俺は先程も違和感を感じた。それは何だろう。何故こんな違和感を感じている。いつ、違和感を感じた？