クライシス

ワクチン

由香……！絶対に、絶対に助けるからな……！雄介は走っていく。

　混乱に乗じたイは由香を連れて逃げた。そして地下街に有る関係者用の出入口に入ると、通路の奥に入っていく。
「いや！」
　由香が叫ぶと、イは由香を殴った。由香の体が吹っ飛ぶ。
「騒ぐな！良いか？次に騒いだら銃をぶっ放す！良いな！」
　イが銃を向けながら叫んだ。由香の口の中に血の味が広がった。
　怖い、怖い。助けて……雄介。由香の体が震える。
　イは通路の奥に進む。そして入口の部屋の名前を見て、ドアを開けた。中は暗く、大きな機械が有った。
　そこは梅田の館内全ての空調の空気を運ぶ配管の一部であった。
　イは由香をロープで縛る。そして、ドライバーで配管の蓋を開け始めた。
　彼は、ここからウイルスをばらまこうとしていた。ウイルスが空気中で生き残る時間は三分間。ここならば数十秒で梅田の街にウイルスがばらまかれる。