クライシス
「総理は空腹時には・・・かなりの量の食事をされますか?」


突然の言葉に桜井総理は顔を上げた。


「まあ、普通ですが・・・」


「満腹に成られたら、目の前に残っている食べ物をどうされますかな?」


「残しますね」


桜井総理の言葉に楠木は満足そうに頷いた。


「ですな、普通はそうです・・・が、世の中には食べても食べても、食べ足りない者もいます・・・何故か・・・満腹中枢が欠如した者です・・・」


楠木はズズッとコーヒーを飲む。


「そして・・・目の前の食べ物が無くなると・・・自分の住んでる家まで食べてしまう・・・それがフュージョンウイルスなのです・・・」


そこまで言うと楠木は周りを見渡した。


「つまり、宿主である人体の中身を食い尽くし・・・それでも食い足りないので・・・その外壁まで食し・・・骨だけにしてしまう・・・」


どこからか唾を飲む音がした。


「その間、僅か三週間です・・・これを止める手立ては・・・」


楠木の言葉を全員が聞いている。


楠木は再びコーヒーを飲むと言い放った。



「一切有りません・・・」



その言葉に全員が力を抜けた表情をした。


手立てが無い・・・


じゃあ、どうすれば・・・?


「この様な物は・・・自然界には存在しません」
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