クライシス
河野は二谷の言葉に三宅の胸倉から手を離し、二谷を睨んだ。


「二谷!本当に大丈夫なんだろうな???これ以上の問題は許さんぞ!!!!」


冷静な河野がこれだけ取り乱す事は珍しいな・・・


二谷は思った。


河野は部屋の隅でボーッと座っている雄介を見た。


「お前もシャキッとしろ!!!!」


そう言って取り調べ室を出て行った。


河野が出て行くと二谷は三宅を見た。


「お前はやり過ぎだ」


「その点に付いては異論は無い」


三宅は笑う。


「俺までとばっちりを食いましたよ」


雄介が呟く。


「ったく・・・お前のせいで岸谷隆司と言う死刑囚はもう一つ罪を背負って死んで行く事になるんだぞ」


「岸谷さんの墓参りにいつか行くよ」


二谷の言葉に三宅は笑った。


今回の逃走劇でマスコミから大阪府警に問い合わせが何十件と入った。


マスコミが映した映像は夕方にニュースとして流れた。


『白昼のカーチェイス』


と題うたれたニュースは全国ネットで中継された。


府警は急遽、府警本部長が記者会見を開き死刑囚の移送時に起こった事故として発表した。


その死刑囚は岸谷隆司と言う最近死刑判決が下った人間とされた。


岸谷隆司は知らない内にもう一つ罪を背負う事に成ったが、まさか三宅一郎の名前を出す訳には行かないので、そうなった。
< 95 / 274 >

この作品をシェア

pagetop