蝶花

しずく


どんよりとした
空気が僕を包み、
灰色の雲は
シトシトと雨を降らす。


「雨……だね」

僕は外の景色を
眺めながら呟いた。


「ったく…この時期は最悪だ」

隣で友達の慎吾が
ブツブツ文句を言いながらワックスで髪を整えている。


この時期―…6月、梅雨



慎吾いわく湿気で髪が立たないのが気に入らないらしい。



「僕は嫌いじゃないけどな、梅雨」

「んあぁ?何か言ったか?」

「……別に何も」

慎吾は"何だよ…"という顔をしてまた髪をいじりだした。



梅雨…このどんよりとした空気が僕は好きだ。

シトシトと降る雨の音だって
心を落ち着かせてくれる。

< 3 / 4 >

この作品をシェア

pagetop