蝶花
しずく
どんよりとした
空気が僕を包み、
灰色の雲は
シトシトと雨を降らす。
「雨……だね」
僕は外の景色を
眺めながら呟いた。
「ったく…この時期は最悪だ」
隣で友達の慎吾が
ブツブツ文句を言いながらワックスで髪を整えている。
この時期―…6月、梅雨
慎吾いわく湿気で髪が立たないのが気に入らないらしい。
「僕は嫌いじゃないけどな、梅雨」
「んあぁ?何か言ったか?」
「……別に何も」
慎吾は"何だよ…"という顔をしてまた髪をいじりだした。
梅雨…このどんよりとした空気が僕は好きだ。
シトシトと降る雨の音だって
心を落ち着かせてくれる。