ーキミノイナイセカイヘー
ブーケはナツを目がけたかのようにユックリと手の中に落ちてきた。

唖然とするナツ


「うっそー」という声と落胆のため息が注がれる。

ナツは誰に言うでもなく「すいません」と頭を下げた。

心の傷を広げるような出来事。

いたたまれない。

立ち去ろうとした瞬間、花嫁と目が合う。

純白のドレスはあまりにも眩しくて、目をすぐ外そうとしたのに外せなかった。

「ミカ.....ン!?」

最悪なシチュエーション、最悪な気分。

ミカンはアウトサイダー[部外者]としてのナツにも綺麗過ぎた。

ミカンが腕を絡める新郎は優しい眼差しを称え、人柄の良さが窺える。

ナツは場違いな自分に気付き、ブーケを足元にソット置いて走ってその場を立ち去った。




落ち着いてきていた心が動揺して鼓動が増していく。

(連れ去りたかった)

しかし、あの笑顔を見たら砂上の楼閣でしかなかった。

結局逃げるしか出来なかったナツ。


今ようやく、裏切られた事を認めさせられた。

心のどこかで「好きな人が出来たの」が嘘であればと願っていたのに。
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