ーキミノイナイセカイヘー
深愛なるミカンへ

あれから7度目の夏が巡ってきました。憶えてくれていますか?


突然こんな手紙が届いてきっと驚いてる事でしょう。

だって俺はこの世界にいないハズだから。


これは遺書じゃなく、恋文と思って読んでくれたら。


ねぇミカン?
何から話そうか?

君は俺に出逢えて良かったと言ってくれるだろうか?
そんな事を繰返し思ってたんだ。

ねぇミカン?
俺の唄は君に何かを残せただろうか?
答えをその口でその声で聞けたら。

ねぇミカン?
たぶん俺は
春には春風になって、君の足下に素敵な花を息吹かせ
夏には蝉になって、夕暮れには鳴き時雨
秋には街路樹になって、目を奪う程の彩付きを見せ
冬には真っ白な綿雪になって、その小さな手のひらにそっと落ち
そうやって君に気付いてもらおうとするだろう。

でも、一切それに気付かないで。これ以上傷付けたくないから。

少しずつ、少しずつ俺を忘れてしまえばいい。

居なくなった人を忘れる事は出来るから。

ねぇミカン?
生きてくのがこんなにも苦痛なんてね。
哀しい事が多すぎて、少し泣き疲れたみたいだ。

ねぇミカン?
今君を呼んでみた。何度も何度も呼んでみた。

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