ーキミノイナイセカイヘー
ナツの気持ちを考えて、傍に行くのを止め、1人入り口でしゃがみ泣く。


「嘘だろっ!?なぁ?冗談だって言えよぉっっ!!」

ナツは南がどうなっているか判っているのに、どうしても認めることが出来ないでいる。


今にも「バ~カ。騙されてやんの」と言って、起き上がりそううだから。


顔を見れば安らかで、
肌に触れれば、まだ微かに体温を感じられる気がするのに。


その温もりが木洩れ日のせいだという事に気付かないフリを一生懸命ナツはする。

「南っ!おい、南ぃー!!」




いつか―




「お前が死んでも泣かねぇよ」

そう言っていたナツの両目から、大粒の雫が溢れ出した。

その雫は、一筋の川となり、陽に焼けて乾ききったボロボロの畳に染みてゆく。

泣き咽ぶナツは南の身体を力一杯揺さぶるー


行き場を喪くした果てしない怒り。

限り無い哀傷。

それを南に判らせるかのように。
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