【バレンタイン短編-2009-】 俺のココ、あいてるけど。
そんなあたしを見兼ねたのか、店長は普段の倍は声をかけてくれて、早めに上がってもいいと言ってくれた。
仕事には私情を挟まないつもりでいても、見る人が見ればあたしの落ち込んだ様子は一目瞭然。店長にもセイジに会いに行くと言っていたからなおさらだった。
それでもやっぱり仕事は仕事だから、心配してくれたのは嬉しいけど店長の言葉に甘えるわけにはいかない。
それに、仕事をしてたほうが少しだけでも気が紛れると思ったあたしは、レジに品出しに走り回っていた。
あと2週間もすれば今年もバレンタインの季節。店内もバレンタイン色に染めなきゃならないから、あたしだけ……というわけにはいかない。
そんなときだった。
「今年のバレンタインって土曜日なんですよね〜」
以前発注していたバレンタインのチョコを品出ししていたとき、一緒に商品を並べてくれていたバイトの子がぽつりとつぶやいた。
「土曜日がどうかしたの?」
あたしはさりげなく聞き返した。歳上だからかな、バイトの子にまで心配されたらなんだか余計に落ち込む気がして。