【バレンタイン短編-2009-】 俺のココ、あいてるけど。
 
あたしが苦し紛れに首を縦に振ると、彼女はプクッと膨れて仕事を再開した。


彼女はイズミちゃんと言って、高1のときからバイトをしてくれてる、ただ今高2の女の子。


1つ上の先輩に片想い中で、去年のバレンタインはチョコすら渡せなかった。そのチョコを2人で食べたのが去年。


で、なぜあたしがそんなことまで知ってるかというと、イズミちゃんの新人指導をしたのはあたしだからって、ただそれだけなんだ。


ただ、前にも何人か新人さんを指導したことはあるけど、イズミちゃんのように長く続かない子ばかりで。


その中でイズミちゃんは仕事熱心だし素直だし、あたしは勝手に妹でもできた気分でいる。だからイズミちゃんに対しては敬語は使わないんだ。


「ところで、今年は宅急便で送るんですか?」


イズミちゃんは話題を変えた。もう膨れてはいないその顔は、今は好奇心の塊だった。


「へっ?何を?」


そう聞き返したあたしは訳が分からない顔。思わず仕事の手が止まった。


「何言ってんですか〜。バレンタインのチョコですよ!」
 

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