【バレンタイン短編-2009-】 俺のココ、あいてるけど。
イズミちゃんは“鈍感ですね”とでも言いたげな様子で小さなため息をついた。
「あぁ。それなんだけどね、今年はどうしようかと思って……」
答えたあたしも違う意味でため息が出た。朝にセイジに八つ当たりしちゃったばかりだったから、バレンタインの話には乗り気になれなかった。
「バカですね」
「バ、バカ!?」
それを聞くと、イズミちゃんは10コも歳が離れてるあたしを一喝した。
「はい!たとえ彼氏が遠く離れようとも心がつながってるならいいじゃないですか。イズミなんて告白もできないんですよ?それに比べたら好きな相手が自分を好きでいてくれるなんて奇跡ですよ!」
イズミちゃんは鼻息を荒くしてあたしの目をキリッと見据えた。その目にはうっすら涙も光ってる。
「イズミちゃん……あの……」
あたしは言葉に詰まった。
片想いしてるイズミちゃんからしてみれば、両想いは奇跡なんだ。その奇跡に何年も甘えてたのはあたし。
奇跡がだんだん普通になっていって、そして、わがままになっていたのはあたしだった……。