【バレンタイン短編-2009-】 俺のココ、あいてるけど。
 
「店長、どうかしました?」


バックヤードに入ると、忙しい時間帯だったこともあって、あたしはさっそく店長に呼び出しの訳を聞いた。


「あぁ、今年もバレンタインの季節が来るなぁと思ってなぁ……」


店長は意外とのんびり屋。この忙しいときに限って話の腰を折るような言い方。簡潔に訳を話してはくれなかった。


「は、はぁ……」


あたしは、早く持ち場に戻らなきゃと焦る気持ちを押し殺して相づちを打つ。


「いやな、毎年で悪いんだが、発注は長澤に全て任せようと思っててな」


店長は、回転式の椅子に座って、頭の後ろに手を組んで、少し暗い蛍光灯をぼーっと眺めながら言った。


「それなら大丈夫ですよ、店長。ちゃんと考えてますから」

「そうか。ならいいんだが。長澤を呼び出したのはそれだけじゃなくてな……」

「……はいっ?」


店長は変わらず同じ姿勢で呼び出しの本当の訳を話しだした。


聞き返したあたしは、いつもと違う雰囲気の店長に嫌な予感が頭をよぎった。


……あたし、まさかクビですか!?って。
 

< 2 / 52 >

この作品をシェア

pagetop