【バレンタイン短編-2009-】 俺のココ、あいてるけど。
「店長、どうかしました?」
バックヤードに入ると、忙しい時間帯だったこともあって、あたしはさっそく店長に呼び出しの訳を聞いた。
「あぁ、今年もバレンタインの季節が来るなぁと思ってなぁ……」
店長は意外とのんびり屋。この忙しいときに限って話の腰を折るような言い方。簡潔に訳を話してはくれなかった。
「は、はぁ……」
あたしは、早く持ち場に戻らなきゃと焦る気持ちを押し殺して相づちを打つ。
「いやな、毎年で悪いんだが、発注は長澤に全て任せようと思っててな」
店長は、回転式の椅子に座って、頭の後ろに手を組んで、少し暗い蛍光灯をぼーっと眺めながら言った。
「それなら大丈夫ですよ、店長。ちゃんと考えてますから」
「そうか。ならいいんだが。長澤を呼び出したのはそれだけじゃなくてな……」
「……はいっ?」
店長は変わらず同じ姿勢で呼び出しの本当の訳を話しだした。
聞き返したあたしは、いつもと違う雰囲気の店長に嫌な予感が頭をよぎった。
……あたし、まさかクビですか!?って。