【バレンタイン短編-2009-】 俺のココ、あいてるけど。
「そんなに身構えるなよ。長澤をクビにしようなんてことはないから」
あたしの気持ちが分かったのか、店長は軽く笑い飛ばした。
「じゃあ、なんですか?」
「長澤の彼氏、今度は新潟支店に転勤だと。だから不憫(フビン)でならなくてな。本店から今連絡が入ったから教えてやろうと思って」
店長はそう言う。
「すみません。わざわざありがとうございました。早くに聞けてよかったです」
あたしはそれだけ言うと頭を下げてすぐに持ち場に戻った。
あたしの彼氏・セイジとは、あたしが新入社員としてこのスーパーに配属になったときに出会った。
最初はあたしの指導係としてついてくれたセイジ。その頃セイジは25歳、あたしより3歳上だった。
1ヶ月ほどの新人指導を終えたあとも何かとフォローしてくれて、そのうちお互いに恋愛感情を持つようになって。
つき合いはじめたのがその年の秋頃だった。それからかれこれ4年半のつき合いになる。
そのセイジがまた転勤で、今度は新潟支店……ますます遠恋になっちゃう。