【バレンタイン短編-2009-】 俺のココ、あいてるけど。
「セイジ!」
始発で帰れば午後からは仕事に行けるなと思っていたあたしは、セイジの言葉に驚いた。
この世には“現実”ってものがあるんだよ、セイジ。今日はもう仕方ないとして、遅れても明日は仕事に!
店長にも“仕事に遅れる”なんてまだ言ってないし、イズミちゃんだって急に言われて困るはず。
いくら少しの間だけでもセイジと一緒に働いたからって、突然男の人に電話を代わられたらきっと嫌だ。あたしならそうだもん。
さっきは“明日のことなんてどうでもいい”と夢中で抱き合ったわけだけど……。
「あはは!そう!プロポーズされたんだ、俺。いいだろ〜?」
携帯を取り返そうとするあたしの手をうまいことよけ続けるセイジは、笑いながらプロポーズのことまでイズミちゃんに話してる。
会話の様子は聞こえないものの、急に話に入ってこられたイズミちゃんのほうは、あたしが思ったような反応はしていないみたい。
「うん、メタボ店長にも言っといて!俺からの要請だからミクをクビにするなって。じゃあ!」
あ、勝手に切られた。