【バレンタイン短編-2009-】 俺のココ、あいてるけど。
そして、そのあとあたしに言ってくれたこと、一生忘れない。
「左手の薬指はミクのためにずっと開けてた。俺のココ、あいてるけど、来てくれる?俺のとこに」
久しぶりに味わうセイジの腕枕でまどろむあたしに、照れながらそう言ってくれたんだ。
部屋の淡いオレンジ色の光の中、左手をあたしの目の前にかざして鼻をすすって……。
「あたしの行くとこ、セイジのとこしかないんだよ?当たり前じゃん」
だからあたしも、セイジの手に自分の左手を重ねてそう答えた。
「だよな!」
「うん!」
そうして、あたしたちは指を絡めて手をつないだまま、まだかすかに香る甘いチョコの匂いの中で目を閉じた。
バレンタインの奇跡はどんな人にも必ず訪れる。あたしやイズミちゃんにも訪れたように、みんな平等に。
それが今年のバレンタインじゃなくても、いつの日か必ず。
好きな人と巡り合って、愛し愛されて新しい人生を歩んでいって。
あたしたちの未来は未知数で、この先に辛いことが待ち受けているかもしれない。