【バレンタイン短編-2009-】 俺のココ、あいてるけど。
少し落とした声のトーンが、あたしが何に寂しさを感じているのかを敏感に感じ取っていた。
セイジも寂しくないわけないんだよね。あたしが涙声で電話に出たから、少しでも明るくしようとして……。
「そうだね。今までだって会おうと思えば会えたんだし……新潟くらい近いよね?」
だからあたしも明るく送り出そうと思って、子どもでゴメンねって思いながらそう言った。
「当たり前だろ?海外に転勤になったって、ミク以外の人は全員ジャガイモに見えるし」
「あはっ、そっか」
「そうだよ。浮気なんてできないくらい、今も忙しくしてるから」
「うん、ありがと。セイジ、体には気を付けてね」
「ちゃんと自炊してっから心配すんな。タバコも吸ってないから」
「ふふっ。そっか、なら安心」
「もう俺も30だしなぁ。メタボにならないようにしてるよ」
いつもの声、いつもの報告、いつものセイジ。全部が全部、いつも通り……。
「メタボ?それでもあたしは好きだよ?」
いつも通りのセイジが嬉しくてあたしはいつの間にか笑っていた。